
ショクシツ。
警察官による職務質問。
文字通りshockでshitsなそのイベントの
参加資格について詳しくは知らない。
が、歌舞伎町や大久保界隈では毎夜
当たり前のように繰り広げられてるらしい。
ただなにしろソレは
シャブ中の通り魔以上に無差別で、
『殺し屋1』に登場しそうな僕の上司
でさえ(ルックスがだ、念のため)、
10年を軽く超える新宿歴のなかで
職質バージンを喪失したのは
つい半年前だという。
3日まえの夜、終電が近づく大久保通りを僕は早足で歩いていた。疲れきっててヘッドホンすらしてなかった。パトカーが通り過ぎた、と思ったら警察官が2人降りてきた。「すいませ~ん」とフレンドリーに近づいてきたが道は塞がれている。咄嗟にすべてを理解したが、僕は水野晴郎じゃないから彼らに用はなかった。
でも中学生のころポリスアカデミーが好きだったから、アメリカンスタイルでかわそうと思った。両手をアタマの後ろで組んで壁を向いて足を広げた。通り過ぎる人々が何事かと凝視していく。警官たちはあわてた。「いやいや、そういうのじゃないんで」。いやコッチこそそーゆーのじゃないんで。
警官A 「刃物とか持ってないか、調べさせてもらえませんか」
警官B 「そのウエストバッグが、ちょっとね…」
田舎育ちのたくましい指がファスナーをこじ開けた。
痛かった。いや痛かったってマジで。分かるだろ?
当然刃物なんて入ってるわけなくて、出てきたのはサイフとかティッシュとかゴムとか。彼らが注目したのはミントの缶ケース。ハワイにいったときの土産で、かわいいバッファローのイラストと【BADASS MINT】って書いてある。フタまで開けさせられたんだけど、向こうのタブレットって大きいからなんていうか、まぁ、疑わしかったんだろうね。
警官A 「…この錠剤は、、、ミン…ト?」
オレ 「はぁ(笑)、ミントですよ間違いなく。食べるとスーッと気持ちよくなるんです」
警官B 「…」
オレ 「たったヒトツブでなんでもできるような気分に(笑)」
警官B 「…悪い冗談はやめなさい」
僕は5粒ぐらい自分の口に放り込んでバリボリ食べた。
彼らにも勧めたたけど食べてくれなかったな。
もちろん肩からさげてたトートの中もばっちり調べられた。アイスバーグ・スリムの「ピンプ」が一冊だけ。これは正直助かった。移動中の僕のカバンには約18%の確立で撮影用のバイブが入っている。当たり前だけどビンビンで。それはそのときどきで黒だったり紫だったり透明だったりするが、その色に意味やソウルはまったくない。会社でそこらへんに転がってるのを放りこむだけ。あえていうならそういうソウルだ。
危険なものを持ってない男がこれ以上警官に引き止められる理由はなにもなかった。でも最後の質問で僕はヘマをやらかした。
警官A 「君、この時間にここらで何を?」
オレ 「いや、仕事の帰りっす」
警官A 「仕事は何やってるの」
オレ 「…サ、サラリーマン(なぜか小声に)」
警官B 「えっ?」
オレ 「へ、編集者…かも」
警官B 「えぇ? なんなの(なぜか強気で)」
オレ 「だーからサラリーマン編集者だよ!(なぜかヤケ気味に)」
たしかに僕はスーツは着ていないけどサラリーマンであり、また、キャリアは無いに等しいが現時点では編集者でもある。だからといって『サラリーマン編集者』というのはヤバすぎないか。大体サラリーマン○○ってのは、何が後ろに来たってカッコ悪い。サラリーマンプロレスラーとか、サラリーマン寿司職人とか。普通の質問になぜか動転してしまった僕は、そんな最低のチームに仲間入りしたことを自ら言わされるハメになった。しかも最凶に最悪な大久保通りで。
ようやく解放されて終電に飛び乗って、ウチへ帰ってまずポリアカのビデオは全部捨てた。3本しか持ってなかったんだけど。